監督 大槻 毅とは?【ザスパクサツ群馬 監督紹介】

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この記事では2022年よりザスパクサツ群馬を指揮する大槻毅監督について、采配の特徴、過去の経歴、注目ポイントなどについて紹介します。

この記事を読むことで、試合中に大槻毅の采配や選手起用にどのように注目すると、より観戦を楽しむことができるかを理解できます。また、大槻毅が過去にどこのチームで指導者として仕事をし、どんな選手たちを指導してきたかを理解することで、より監督に感情移入しながら応援を楽しめるようになります。

大槻毅はどんな監督か?

大槻毅は2022年からザスパクサツ群馬で指揮を取る監督です。データを駆使した分析能力、若手育成能力、選手の士気を高めるモチベート能力などに強みを持つ指揮官です。2020年までJ1浦和レッズで監督を務めた実績と経験値を引っ提げ、2022年にザスパクサツ群馬の指揮官に就任しました。2022年シーズンはJ2リーグ20位の成績でJ2残留を果たすと、2023年シーズンはJ2リーグ戦を勝ち点57、11位の成績でシーズン終盤までJ1昇格プレーオフ圏を争うなど、チーム過去最高成績でサポーターを沸かせました。

大槻毅の経歴

大槻毅は宮城県仙台市の出身です。父親がサッカーをやっていた影響もあり、小学校時代からサッカーをはじめます。最初はGKでプレーし、その後はDFとしてプレーしていたそうです。高校時代には仙台二高に進学してプレーし、3年次には宮城県選抜として国体でもプレーしています。

大槻毅は高校卒業後は、筑波大学に進学してプレーしました。当時のチームメートには、2年上に三浦文丈、1年上に藤田俊哉、同学年に大岩剛、1年下に望月重良や上野優作がいました。大槻毅はAチームには在籍していましたが、スタメンを確保することは叶わなかったといいます。

大学卒業後、大槻毅は宮城県立富谷高校の教員試験にパスし、サッカー部の監督を務めつつ並行してJFLのソニー仙台FCで選手としてもプレーしました。

現役引退後は、指導者としての道を歩むことになります。1998年から筑波大学蹴球部コーチ、2000年よりJ2水戸ホーリーホックのコーチ、2003年よりJ2大宮アルディージャのコーチを歴任します。

2004 年からはJ1浦和レッズの強化本部スタッフ入りした後、2006年から2010年まで浦和レッズのコーチを務めます。この時に浦和レッズトップチームに選手として在籍していた細川萌とは、後にザスパクサツ群馬で再合流することになります。

2011年には、故郷のクラブであるJ1ベガルタ仙台のヘッドコーチに就任します。当時のベガルタ仙台では、手倉森誠監督のもと渡邉晋コーチとともに仕事をしました。この時に選手として在籍していた渡辺広大とは、後にザスパクサツ群馬で再合流することになります。また、大槻毅がベガルタ仙台に在籍したのはこの一年間だけでしたが、この時に東北大震災を経験しています。

2012年には浦和レッズへ強化部スタッフとして戻り、2013年からは育成ダイレクター兼ユース監督に就任します。2018年4月まで監督を務めた浦和レッズユースでは、多くの若手選手を輩出しました。2013年時に3年生だった1995年生まれ世代で関根貴大、広瀬陸斗、進昂平、1996年世代で茂木力也、1997年世代で新井瑞希、中塩大貴、邦本宜裕、1998年世代で伊藤敦樹、川上エドオジョン智慧、山田晃士、1999年世代で橋岡大樹、荻原拓也、長倉幹樹、弓削翼、2000年世代で石井僚、大城蛍、2001年世代で山中惇希、玉城大志といった選手たちを指導し、多くの選手をトップチームに送り出してきた育成実績を誇ります。また、チーム成績の面でも2015年にJユースカップ優勝、2016年に高円宮杯U-18サッカーリーグプリンスリーグ関東1位でプレミアリーグ昇格などのタイトルをユースチームにもたらしています。

2018年4月2日、浦和レッズトップチームの堀監督が成績不振で契約解除されたことに伴い、暫定的にトップチームの監督に就任します。リーグ戦開幕から0勝2分3敗で勝利が無いチームの立て直しを託されました。就任発表から2日後のルヴァンカップサンフレッチェ広島戦をドローに持ち込むと、その2日後のベガルタ仙台戦でリーグ戦初勝利を手繰り寄せます。中盤のプレス強度を上げ、縦に早い攻撃を重視するシンプルな戦術で見事にチームの混乱を収め、システムを4-4-2からミシャ監督時代の3-4-1-2に変更することで当時の攻撃コンビネーションを復活させるなど、短期間でチームを立て直す手腕を見事に発揮しました。また、当時ルーキーだった浦和ユース時代の教え子である橋岡大樹や、大卒新人の柴戸海など若手選手も積極的にスタメンに使う大胆な選手起用も話題に上がりました。4月22日に後任のオリヴェイラ監督が就任するまでの期間を公式戦4勝2分0敗の成績で終え、無敗のままオリヴェイラ監督へバトンを繋ぎました。そしてオリヴェイラ体制でもヘッドコーチとしてチームに留任しました。

2019年シーズン、大槻毅は3月にトップチームから離れますが、同年5月にオリヴェイラ監督が成績不振で解任されたことに伴い再度、浦和レッズトップチームの監督に就任します。リーグ戦4連敗の危機的な状況下で、中村GMから「大槻しかいない」とのことで後任監督として白羽の矢が立ちました。当時の浦和レッズの選手には、西川周作、槙野智章、橋岡大樹、阿部勇樹、柏木陽介、長澤和輝、武藤雄樹、興梠慎三などが在籍していました。また、2019シーズン新加入選手として、鈴木大輔、山中亮輔、エヴェルトン、杉本健勇らを補強し、豊富な選手層を誇っていました。しかし、大槻監督の浦和レッズはシーズン終盤までチーム浮上のきっかけを掴むことができず、ACLでは準優勝と気を吐きますが、J1リーグ14位で何とか残留を果たすなど期待を裏切るシーズンとなってしまいます。

2020年シーズン、大槻毅は浦和レッズトップチームの監督を続投します。過去2シーズンと異なり、初めてシーズン開幕時からチームの指揮を取ることにになりました。チームには新たな新加入選手としてレオナルド、トーマス・デン、伊藤涼太郎を迎えます。大槻毅はシステムを前年の3-4-2-1から4-4-2に変更し、新たな戦術をチームに浸透させて再起を図りました。最終的な結果はJ1リーグ戦10位と振るわなかった印象ですが、チームの強化部が一新され、2022年優勝をゴール設定とする3カ年計画の方針が打ち出されたその初年度を、限られた戦力・条件で踏み出し次の政権にバトンを繋ぐ役割を全うしました。大槻毅は2020年シーズンをもって、浦和レッズトップチーム監督を退任します。

そして1年間の充電期間を経た2021年12月、大槻毅が2022年シーズンよりザスパクサツ群馬の監督に就任することが発表されました。

大槻毅の采配の特徴

大槻毅監督の采配面での特徴は、【可変型システムの採用】【ゴール前の鉄壁の堅守】【ゴールキック時の独特のビルドアップ】の3点になります。

大槻毅監督の采配における最大の特徴は、可変型システムの採用です。ザスパクサツ群馬で大槻毅監督が採用する基本フォーメーションは4-4-2とされています。これは松本大樹強化本部長が標榜するシステム方針と同じです。しかし実際の試合中は守備時に4-4-2、攻撃時には3-4-2-1へとフォーメーションを変えながら戦います。守備時には4-4-2システムの最大の特徴である、ピッチに均等に人が配置される4-4のブロックでスペース管理を徹底し、強固な守備ラインを形成しています。一方で攻撃時には左SBの選手が中に絞って3バックを形成し、右SBの選手は前に上がって右SHまたはインサイドハーフの高い位置を取ります。4-4-2の弱点である攻撃面での単調さと奥行きの無さを解消するために3-4-2-1のフォーメーションを取り、ビルドアップ面での選択肢を増やす工夫を施しています。これにより、4-4-2を使うチームにありがちな堅守速攻型のカウンターサッカーとは一線を画す堅守多攻型のサッカーを志向しています。シーズンを追うごとに可変型フォーメーションの引き出しやオプションも進化を続けています。2022年シーズンは攻撃時に右SBの選手が右SHのポジションまで上がり、右SHだった選手がトップ下のポジションに絞ってゴール前に侵入する3-4-2-1を取っていました。2023年シーズンになると右SBの岡本一真や川上エドオジョン智慧の攻撃能力の高さをより引き出すため、攻撃時は右SBの選手がサイドではなく中央の高い位置を取る可変型3-4-2-1を採用しました。この時、右SHの選手(主に佐藤亮)はそのまま右サイドに張り出し、右SBの選手がインサイドハーフとしてピッチ中央でパスワークに絡みながら得点機とみるやゴール前のスペースまで一気に侵入してくるため、相手DFにとっては非常に捕まえづらい存在として、攻撃面での効果を発揮していました。

大槻毅監督の采配における特徴の2点目は、安定した堅守です。2023年シーズン、ザスパクサツ群馬の失点数は44でJ2リーグでは4番目に失点が少ないチームとして、その守備力の高さが際立っていました。その基本戦術はフィールドプレーヤー10人が均等にピッチのスペースを埋める4-4-2のフォーメーションを採用し、守備時のスペース管理を重視しています。リスクの高い前線からのハイプレスは行わず、ゴール前にコンパクトな陣形を引いて相手を迎えるゾーンディフェンスが基本的な守備戦術となります。2022年シーズンの課題として、CBの選手がサイドレーンやハーフスペースのカバーリングに入って中央から釣り出されたところを狙われ、ゴール前にクロスを放り込まれて失点を喫する場面が目立ちました。この課題を改善するため2023年シーズンはCBの選手が中央の持ち場を離れずにドッシリとゴール前に陣取り、彼らが外に釣り出されないようSBの選手には自陣ハーフスペースを埋めるポジショニングを徹底しています。SBがしっかり引いてポジションを埋めるため、大外のサイドレーンにできるスペースはSHの選手が引いてカバーする運用となっており、SHの選手にはかなりの運動量と守備貢献が求められます。そのためSHの選手起用については交代カードも含めたプランニングで、90分間守備の強度を落とさないようケアしています。

大槻毅監督の采配3点目の特徴は、ゴールキック時の独特のビルドアップになります。大槻ザスパのゴールキック時の選手のポジショニングにぜひ注目してみてください。GKと極端に近い位置にDF3人、その少し前方にボランチ2人がポジションを取ります。逆に残りの5名(FW2人、SMF2人、右SB1人)は最前線まで上がってチャンスを待ち、中盤にはスペースが空いた歪な並びを取ります。そしてゴールキックは極力長いボールは使わず、DF3人とボランチ2人で細かくショートパスを繋ぎながらビルドアップを図ります。極端に低い位置でパス回しを行うDFとボランチに注目がいきがちですが、この戦術の妙は、前線に5人の選手を張らせている点にあります。相手チームの守備陣は、万が一ゴールキックでロングフィードを入れてくる可能性を想定し、最低5人はフィールドプレーヤーを後方に残してマークをみる必要が出てきます。故に相手チームがザスパのゴールキック時に前線からチェイシングを仕掛けてきたとしても最大5人までの制約が掛かります。対するザスパのビルドアップはDF、ボランチ、GKも含めた6人で行いますので理論上は数的優位でボールを失うリスクは低い計算となります。また、最前線と最終ライン付近に極端に両チームの人が振り分けられる配置となるため、中盤には広いスペースができやすくなっています。GK、DF、ボランチの6人のビルドアップで相手チームの前線からのチェックをかわすことに成功すれば、中盤に開けた広大なスペースにボールを運ぶことができ、ドリブルが得意なSMFやFWの選手が前を向いてボールを持つシーンを増やすことが可能です。

最近では相手チームもこの戦術を研究してきており、ザスパのゴールキック時に前線からマンマークで人をぶつけて自由にビルドアップをさせないよう対策をしかけてくるチームも増えてきました。味方ゴール前でのパスワークを相手に奪われると即座にピンチを招くリスクも懸念されます。しかしそれでも、攻守で可変型システムを採用するザスパクサツ群馬にとって、セットプレーのゴールキックは明確に3-4-2-1の陣形を敷いて自分たちのリズムで攻撃をスタートできる貴重な機会です。ザスパは前線からのハイプレスは採用しない戦術ですから、ショートカウンターなどによるチャンスも望めませんし、4-4-2システムにありがちな単調なロングカウンターも使いません。自分たちがボールを持てる数少ない機会を、自分たちが能動的にチャレンジすることでより効果的に相手守備陣にギャップを生み出し、得点チャンスに変えていく。この方針を徹底して行き着いた攻撃オプション、堅守多攻の信念を体現した戦術といえるでしょう。

大槻毅の注目ポイント

大槻毅の注目したいポイントは、浦和レッズユースチルドレンの登用です。先にも紹介した通り、大槻毅は浦和レッズユースチームの監督を約5年間務めた経歴があります。その時の教え子たちは2023年12月現在の時点で22歳〜28歳の年齢になっており、まさに今がサッカー選手として売出し中、あるいはキャリアのピークに差し掛かる世代です。浦和トップチームをはじめJ1からJ3まで幅広いチームで活躍している彼ら教え子たちを、大槻毅の人脈も含めて移籍獲得してくる流れが、大槻毅監督就任後のザスパクサツ群馬の一つの補強戦略として定着しつつあります。2022年には長倉幹樹を獲得、2023年には中塩大貴、川上エドオジョン智慧、石井僚を獲得し、2024年には玉城大志が加入予定です。今後の新規加入選手にも注目していきましょう。

そしてもう一つの注目ポイントが、選手やファンサポーターに対する強い愛情と、90分間絶対に諦めないメンタリティです。試合前後のインタビューをはじめ大槻毅の発言からは一貫して、「応援しにきてくれているサポーターのために何とか勝利を届けて喜んで帰ってもらいたい」という真っ直ぐな思いや、「選手がよく闘ってくれた」という感謝の念が言葉から溢れ出ています。仙台のコーチ時代や浦和レッズ監督時代から非常に熱い人物として選手から慕われていたように、言葉に魂や愛情を込めてわかりやすく言語化する能力に長けており、さらに試合に出れていない控え選手への気持ちのケアなど細かい面まで行き届いた配慮が、モチベーターとしての高い手腕に繋がっています。選手一人ひとりのキャリアや将来にも寄り添ってあげる姿勢も、選手から慕われる一因のようです。そしてサポーターに対しては「勝利を届けること」と同じくらい「最後まで諦めずに闘い抜く姿勢をみせること」を重要視しています。それ無くして応援してもらおうなどと思ってはいけない、というメンタリティを選手に求めます。それ故か、ザスパクサツ群馬の試合では2点、3点と相手チームにリードを許して劣勢になってから、後半スイッチが入ったかのような怒涛の反撃で得点を積み上げる、という試合も少なくありません。今日の試合は正直厳しいかもな・・と思えるよう劣勢な試合でも、サポーターとして最後まで諦めずに逆転を信じましょう。

2024年シーズンも大槻毅が指揮を取ることが決定したザスパクサツ群馬は、大槻体制3年目を迎えます。より一層、大槻毅監督の戦術浸透・定着・進化が期待できるザスパクサツ群馬をこれからも応援していきましょう!

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