この記事では2022年よりザスパクサツ群馬に在籍する川本梨誉について、プレーの特徴、過去の経歴、注目ポイントなどについて紹介します。
この記事を読むことで、試合中に川本梨誉のどういうプレーに注目すると、より観戦を楽しむことができるかを理解できます。また、川本梨誉が過去にどこのチームで、どんな選手たちと共にプレーをして、どんな活躍をしてきたかを理解することで、より選手に感情移入しながら応援を楽しめるようになります。
川本梨誉はどんな選手か?
川本梨誉は2022年からザスパクサツ群馬に加入したFWの選手です。強靭なフィジカルと技術力を併せ持っており、縦への推進力、裏への動き出し、パンチの利いた強烈なシュートに強みを持つ選手です。主にCFでプレーしますが、SMFやSBでのプレーも可能です。2022年は途中加入ながら10試合出場1得点の実績を残し、シーズン終盤のJ2残留争いに貢献しました。
川本梨誉の経歴
川本梨誉は静岡県静岡市出身です。小学校時代は大里西小学校の中田サッカースポーツ少年団でサッカーを始めます。当時から非常に負けん気の強い性格で、2つ上の兄に負けたくない一心でボールを追いかけていたと言います。
中学時代は清水エスパルスジュニアユースに加入します。岩下潤監督の指導の下で中心選手として活躍しました。中学3年次には主将としてチームを引っ張り、飛び級で清水エスパルスユースチームへも帯同するなど、クラブからその将来を期待されてきました。また、この頃の川本梨誉は本来のポジションであるFWではなく、ボランチでプレーをしています。この起用意図には、より高いレベルに行くために守備もできる選手に育って欲しい、という岩下監督の親心があったそうです。また岩下監督は、主将としてチームメートを鼓舞するような振る舞いができずに悩んでいる川本梨誉に、プレーで示し背中で引っ張るリーダーシップを助言するなど、心身ともに成長を促すようサポートしてきました。「親と子のように接してくれた」と後に川本自身も振り返っています。そういった恩師の指導に導かれ、中学3年次には春のJFAプレミアカップ、夏の全日本クラブユース選手権、そして冬の高円宮杯全日本ユースU15選手権の3大会を優勝し、2012年のガンバ大阪以来となるジュニアユース世代三冠という快挙を達成します。特に集大成となった高円宮杯決勝コンサドーレ札幌U15戦において、川本梨誉は攻守に絶大な存在感を発揮し、チームを優勝へと導きました。試合序盤1点リードされた直後の前半11分に、相手GKの意表を突く川本梨誉のロングシュートで同点ゴールをマーク。さらに2点追加したチームは3-1と試合をリードしますが、後半は相手に押し込まれる苦しい時間帯が続きます。そんな中、川本梨誉は後半20分に相手DF2人に囲まれた状態から重心の低いドリブルで一気に相手をかわし敵陣まで単騎突破していく圧巻のプレーを披露し、主将としてチームを背中で引っ張る活躍をみせました。
中学卒業後、川本梨誉は清水エスパルスユースへと昇格します。ユースチーム監督は平岡宏章、チームメートには1学年上に梅田透吾、同学年には鈴木瑞生、ノリエガ・エリックが在籍していました。高校2年次の2018年にはスタメンで活躍するようになり、日本クラブユースサッカー選手権 (U-18)大会で優勝を収めています。
高校3年次には川本梨誉はチームの中心選手としての活躍は勿論、トップチームにも2種登録され5月22日のルヴァン杯ジュビロ磐田戦でトップチームデビューを果たします。最終的に2019年はリーグ2試合出場、ルヴァン杯1試合出場、天皇杯2試合出場をトップチーム選手として果たしつつ、ユースチームの中心選手としてプレーしました。
また、高校年代での川本梨誉はU16日本代表、U18日本代表など世代別代表にもたびたび招集されるようになり、その将来性に期待が集まりました。当時の世代別代表では、斉藤光毅、西川潤、藤尾翔太、櫻川ソロモン、松岡大起、宮城天、鈴木彩艶、小久保玲央ブライアンなどと共にプレーをしています。一方で川本梨誉本人が希望するFWのポジションで起用されることは少なく、代表では常にSMFやSBで起用されることには少なからずの葛藤や、適応への難しさがあったと思われます。清水エスパルスユースでもSBやウイングバックでの起用が増えてきたこともあり、川本梨誉はコンバートを前向きに受け入れて複数のポジションでのプレーを重ねていきました。
そして高校卒業時の2020年、川本梨誉は清水エスパルストップチームへの加入を果たします。当時のトップチームはクラモフスキー監督が指揮を取り、チームメートにはカルリーニョスジュニオ、ヘナトアウグスト、鈴木唯人、鄭大世、エウシーニョ、立田悠悟などが在籍していました。しかし、プロ1年目となるシーズンは出場機会を掴むことに苦戦します。リーグ戦第34節ガンバ大阪戦で、初スタメンでプロ初ゴールを決める勝負強さを見せますが、最終手にはリーグ6試合出場1得点の実績に終わります。
2021年シーズン、川本梨誉はファジアーノ岡山へ育成型期限付き移籍で加入します。有馬賢二監督の下で、チームメートにはミッチェル・デューク、上門知樹、宮崎幾笑、徳元悠平、喜山康平、清水ユースで1年先輩だった梅田透吾などが在籍していました。川本梨誉はシーズン序盤こそ控えに回ることが多かったものの、前線の選手に怪我人が出てきたことから第9節の群馬戦以降、スタメンでの出場が増えていきます。第12節の町田戦、第13節の千葉戦では2試合連続で豪快なゴールを決め、サポーターに強烈な印象を残します。最終的には30試合出場2得点の実績を残しました。
2022年シーズンも川本梨誉は期限付き移籍を延長し、ファジアーノ岡山でのプレーを選択します。チームは木山隆之新監督の下で前線の選手を中心に大型補強を敢行し、ヨルディバイス、チアゴアウベス、ステファンムーク、ハンイグォンなどが新たに加入します。厳しいポジション争いが予想されましたが、川本梨誉は着実に出場機会を掴み取り、21試合出場2得点の実績を残し、CFやトップ下のポジションで活躍しました。
そして2022年8月1日、ファジアーノ岡山からザスパクサツ群馬への期限付き移籍が発表されます。加入直後の第34節栃木戦から早速スタメン出現を果たすと、シーズン終盤戦を10試合出場1得点の実績で終え、チームのJ2残留に貢献しました。
川本梨誉のプレースタイルと強み
川本梨誉のプレースタイル最大の特徴は、縦への推進力を活かしたドリブル突破です。スピード、テクニック、フィジカルの強さを兼ね備えた万能型ストライカーのため、前を向いてボールを持った時の選択肢が豊富で、1人で相手ディフェンダーをかわしてシュートチャンスを創出することが可能です。U18日本代表や清水エスパルスユースでSBやSMFなどのポジションで起用されることが多かったのも、サイドでのドリブル突破力を評価されてのものでした。当たり負けしない体幹の強さと、しなやかな身のこなしを特徴とした、重心の低い独特のドリブル突破が持ち味です。
そのルーツは、清水エスパルスジュニアユース時代のトレーニングにあります。ターニングポイントとなった中学2年次の8月に実施されたオランダ遠征中のクラブブルージュU15との試合で、ヨーロッパの選手とのフィジカルや技術の差を痛感した清水エスパルスジュニアユースのスタッフ陣は、帰国後に日々のトレーニングや食生活から抜本的な改善を施していくことになりました。食生活改善では週2回クラブハウスで選手全員で食事を取るようにし、そのメニューを選手の親とも共有しながら、食事の質と量をしっかり取るようにサポート体制が組まれました。また、体幹作りでは選手の姿勢に注目した独特のトレーニングアプローチが話題になりました。日常生活から正しい姿勢で歩く・立つ・座ることの重要性を選手に講義形式でレクチャー、早朝から正しい姿勢で歩くエクササイズトレーニング、試合中のハーフタイム時にも正しい姿勢でプレーできているかを細かくチェックが入るなど、およそサッカーチームとは思えない練習風景が話題に上がりましたが、結果的にはこのアプローチが、2016年ジュニアユース三冠という偉業に繋がっています。試合観戦時には、川本梨誉のランニングフォームやドリブルの姿勢にも注目してみましょう。上体が真っ直ぐ伸びた綺麗な姿勢が印象的です。
また、精度の高い強烈なシュート力も川本梨誉の持ち味です。遠近問わず幅広いシュートレンジを誇る選手で、フリーの状態で前を向いてボールを持った時には、遠めからでも積極的にゴールを狙うことが可能です。相手ディフェンダーに囲まれた密集エリアの中でも半歩かわしてシュートを狙うなど、多少強引な形でもゴールを狙える力強さも魅力です。清水エスパルスユース時代からファンの印象に残るスーパーゴールを数多く決めてきましたが、全体的なフィニッシュワークの精度がプラスされてくれば、さらなるゴールラッシュも期待できるでしょう。
川本梨誉の注目ポイント
川本梨誉の注目したいポイントとして、自信に満ち溢れたピッチ上での振る舞いと、独特の存在感が上げられます。ボールを持った時の落ち着き払った姿はとても頼もしく、観ている者に、何かやってくれそうだ、という期待感を抱かせます。チームが劣勢の状況でも顔色1つ変えずに虎視眈々とゴールを狙う図太さとメンタルの強さも持ち合わせます。そして、豪快なゴールを決めた直後でも喜びを爆発させるような振る舞いはせず、淡々とチームメートと祝福し合う姿が印象的です。オレはこのくらいのゴールを決めて当たり前の選手だ、と言わんばかりの涼しい表情からは、既に大物感が漂っています。
もう1つの注目ポイントは、やはり今後の成長、将来性への期待値の高さです。清水エスパルスユース時代から期待されてきた攻撃性能の高さと推進力は、U18日本代表でも評価を受けてきました。一方で本職のFW以外のポジションでも起用されてきたキャリアからは、良く言えば適応力が高い、悪く言えば器用貧乏、というキャラクターが浮かび上がってきます。川本梨誉が周囲の期待通りにさらなる飛躍を目指す上では、自身のポジション適性とプレースタイルをどう確立していくのかが非常に重要であり、多くの選択肢と可能性を秘めた選手と言えるでしょう。川本梨誉のさらなる成長を追いかけながら、応援していきましょう!